絵画の中のかご⑨岸田劉生の「竹籠含春」。
一応今回でこのシリーズは終わりです。
岸田劉生(1891-1929)の「竹籠含春」。
麗子像や力強い風景画などで有名な岸田さんですが、こんないい感じの静物画も描かれていたのですね。
大正時代か昭和初期の作品と思われます。
岸田劉生『竹籠含春』|絵画の買取・鑑定相談・相続査定なら花田美術
2色に染め分けられた竹で編まれたかごに、6輪の椿が生けられています。
椿は大ぶりでハッキリした色と形、印象が強くていろんな物語を託されてきた花です。
ぽとりと花ごと落ちてしまうので、武士の家では首切りの暗示を嫌って避けたというのは有名だと思いますけど、
大島弓子だったか、「椿の花を落さないで」というのもありました。
伊豆大島の椿油の艶々の黒髪とか、少しだけ南方のイメージもあります。
日本的な花ですが、この絵では油絵のせいか構図のせいか、やっぱり大正・昭和初期のモダンな空気を呼吸している感じがします。
洋間が一室くらいあるような木造の家。
向田邦子の自伝的ドラマで出てくるような、勤め人のお父さんがうちに帰ると和服を着ているような、ちゃんとしたお家の玄関に生けられている姿が思い浮かびます。
それにしても 椿にとてもお似合いなかごです。
このバイカラーは見たことがないですが、花を生けたり果物を盛るお茶の間用の竹かごには艶のある厚めの塗装のものが多いように思います。
かなりの割合で普通のお宅にあったような。
うちにもありました。
どこで買ったんだろう。民芸品店とか、デパートとかだったでしょうか。
茶の湯の世界の「花籠」などのような高級品の、カジュアル版なのだろうなという感じもします。
農業漁業や家事のいろいろな場面で使われる無塗装の竹かご竹ざるとは違う仕上がりです。
正統派の竹工芸はずっと続いていくし、歴史的な名工の作品は記録が残ると思いますが、こういうものは無くなっていきそうな気がします。
昭和のお茶の間そのものがもうないですからね。
少しだけ淋しい気もしますが、それは知っていたからであって、意識せずに終わらせてしまっていることがこの世には無限にあると思います。
いろんなものが生まれては消えていくのは、仕方がない。
でも厚塗りのお茶の間かごを、新しい解釈で作りなおしてくれる人が出てきたらきっと面白いとも思います。
話がそれています。
絵画の中のかごを探すことは、意外と昔のことについて考えることにもなりました。
最後は忘れていた風景を思い出させてくれるような、近い昔の絵でした。
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