絵画の中のかご⑧葛飾北斎
かごの絵探しが続いております。
前回の記事で、狩野派や琳派について書きました。武家社会や仏教やお金持ちのための絵です。
一方、江戸時代になると庶民に人気の浮世絵が日本を代表する芸術と言えるほど豊かなものになりました。
浮世絵は普通の人々の暮らしが描かれているので、かご・ざるをはじめとした各種編組品もよく出てきます。
その中に、かごが存在感を持って描かれた絵もありました。
巨匠・葛飾北斎の絵です。
シリーズものの絵なのかとか場所や製作年など詳細もわからないのですが、”Basket Rider”とかっこいい英名がつけられていました。
かご渡しというやつですね。
Katsushika Hokusai: Basket Rider - Artelino - Ukiyo-e Search
この絵とても好きです。
スコンと抜けた空間をかご渡しの名手が横切っています。
材木か何かを運んでいるんでしょうか。
体つきとか力の入れ具合とか見ても、乗りこなすのなんかもう得意中の得意でご機嫌に風切ってるように見えます。
歌川広重の「六十余州名所図会」の中にもかご渡しの絵があります。
これは飛騨。 (1853年)
歌川広重: Hida - Japanese Art Open Database - 浮世絵検索
かごの形状とか雰囲気はちょっと違うので同じ場所なのかどうかわかりませんが・・
同じような題材を扱っても個性の差が感じられて面白いですね。
これです。
北斎の浮世絵にはこんなのもありました。(1804年)
かご職人の絵ですね。
”Basket Maker at Fuchu”となっています。
https://ukiyo-e.org/image/mfa/sc142233
「東海道五十三次」の「府中」です。
「東海道五十三次」というと歌川広重の方が有名ですが、広重が出す前にすでに北斎が8シリーズも作っていたのだそうで、その中の一枚です。
東京の府中ではなく静岡の府中。
竹工芸が栄えた地であったようです。
ところで浮世絵には、西洋の静物画のような絵はありません。花卉画と言われるような、自然の状態から切り離して花瓶やかごに入れた花の絵はほとんどないと思われます。
北斎や広重の花鳥画も、人間の暮らしに近いところにある自然ではあるけれど、生きている状態の植物や動物の絵です。
大胆な画面構成もそうですけど、狩野派の襖絵とも通じる感覚ですね。
北斎。
https://ukiyo-e.org/image/mfa/sc226740
広重。
https://ukiyo-e.org/image/mia/61200
でも一枚だけこんなのがありました。
「北斎写真画譜(1814年)」の中の絵です。
https://ukiyo-e.org/image/aic/74645_318827
とは言え、かごの花を描いてもアシメトリー。
切ってきた花をバサッと放り込んだみたいな感じです。
「Chrysanthemums in a Basket」。
牡丹か芍薬みたいですが「Chrysanthemum」というと、菊ですね。
日本語のタイトルを知りたかったのですがわかりませんでした。
そして「in a Basket」。
なんとなく違和感があります。
たぶんかごでなくざるに近いものじゃないかと、かごに美しく活けてあるのではなく、水切りでもしている途中なのではないかと思うのですが。
そう思うと花も瑞々しく見え、そう思うこと自体も日本人らしいのではないかと思います。
「北斎写真画譜」は有名な北斎漫画などと同様「絵手本」で、名所図会などと比べてあっさりした画面がこれはこれでとてもいい感じです。
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