絵画の中のかご⑦二条城二の丸御殿の杉戸花篭図

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今回は日本です。

日本にはどんなかごの絵画があったのでしょうか。

 

絵と言われて私たちが思い出す、額縁に入れて飾られるような絵画が日本で本格的に広まったのは明治以降ときいています。

それ以前、中世くらいまでは絵といえば絵巻物や仏教画、または中国由来の水墨画などだったようですが、近世になると狩野派や琳派などの装飾画が独特な発展をしました。

 

お寺やお城の内部を彩る襖絵や屏風絵はその代表格。

中でも二条城二の丸御殿は狩野派による障壁画の数々が厳かに絢爛に空間を圧倒しています。

松の緑や桜という定番化されたものでもあり、写実的というよりはデザイン化された木々の風景ですが、自然への畏敬を感じさせる力強くて華やかな究極の日本の美だと思われます。

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二条城 | 特別展「京都―洛中洛外図と障壁画の美」

私にとっても、何年か前にすごく久々に訪れてみてこんなにすごかったんだと驚いてしまったのが二条城でした。

建築そのものも、内部の空間も装飾も、変な言い方で申し訳ないけれど恐いくらいお洒落、と感動したのでした。

 

でもその時は気づけなかったのが、花かごの絵!です。

二の丸御殿の黒書院の、部屋の中ではなく廊下の突き当りの杉戸に描かれたものだそうです。

狩野尚信の手になる「黒書院杉戸花篭図芙蓉(1626)」。

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https://readyfor.jp/projects/nijojo/announcements/4449

松と桜の襖絵の、画面からはみ出しそうな勢いと比べるとずいぶん可愛らしくまとまった感じの絵です。

西洋風な感じもします。

 

二条城で障壁画を永く保存するために、古色復元模写と原画の保存修理が行われているという記事を見つけました。

その記事によりますと花篭図の芙蓉の描写は南宋時代の中国の絵をお手本にしているのだそうです。

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http://www.kyobunka.or.jp/kaiho/index_35.html 

桂離宮や仁和寺などの書院の杉戸にも花かごの絵が描かれているということなので、ある程度パターン化された配置なのかも知れません。

何か意味を持たせて描かれているのかも。

いずれにしても花かごの絵は、脇役らしく描かれてますね。

 

花篭図のお手本であった南宋時代の中国の画家の中では、李嵩(1166—1243)という方が花かごの絵をいくつか描いています。

掛け軸にして飾られるタイプの絵でしょうか。

花かごが主役です。

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https://www.npm.gov.tw/dm/album/selection/d060.htm

真ん中におさめる構図とか、人工的にアレンジされた感じなどを見るとやはり日本の感覚とは差があります。

東洋風と西洋風の中間のような感じもします。

かごの花を描く、ということ自体も中国からの輸入なのかも知れないですね。

 

かご本体も見たことないような豪華版。

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李嵩 花籃圖

こちらは別の画家(銭選《推定1235-1301》)の作。

これは少し日本っぽいか。

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http://abc0120.net/thread-667-1-1.html

 

日本でも中国から影響を受けている「文人画」の絵師、柳沢 淇園(1703-1758)という方などは花かごの絵を描いていたようです。

やはり掛け軸にして飾られるタイプの絵ですね。

間の取り方が二条城杉戸絵に少し似ているでしょうか。

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http://aaada.org.au/items/?item=6255

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The Nordic Lotus Ikebana Blog: May 2015

  

そしてこちらは酒井抱一(1761-1829)の「乾山写花籠図」。

琳派の中心人物である尾形光琳の弟、尾形乾山の花籠図を模しています。

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http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2013/0827/0827.html

かごは簡単に描かれ、あえてシンメトリーにせず俳味のようなものを醸しています。

  

酒井抱一も琳派の流れをくむ絵師。

江戸風なので軽やかにカジュアルになってはいますが、とても日本的な感覚で繊細な自然を表現した人なのでかごの絵を描いてもやっぱりそんな感じになるのですね。

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酒井抱一「四季花鳥図巻」(部分)東京国立博物館

Image:TNM Image Archives  Source:http://TnmArchives.jp/

  

・・ここまでで終わりますと、やっぱりあんまり見つけられなかった、となってしまいますが・・

日本には浮世絵があります。

 

次回です。

 

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