絵画の中のかご⑤ゴッホ
ご存じゴッホです。
フィンセント・ウィレム・ファン・ゴッホ(Vincent Willem van Gogh 1853-1890)
10年たらずの活動期間に2000点以上の作品を残したそうです。
wikipedia.orgにて、1000点以上(たぶん。)の絵をみることができます。
直に作品をみる体験とは違うとは思いますが、スライドショーのようにして大量のゴッホの作品を年代順に見てみるとやっぱりすごいです。
よかったらこちらから⇩
あまりにも有名な作品がたくさんあって、かごの描かれた絵の存在感は大きくはないですが19枚見つかりました。
社会に出てから職を転々としていたゴッホがすべてに挫折した後、画家を志し、作品を発表し始めたのは28歳頃だそうです。
それから約4年後のまだオランダにいる時代、10点のかごの絵を描いています。
同じ頃に描かれた農村の人々、農村の風景、よく知られている「ジャガイモを食べる人々」、などと同様に暗いトーンで描かれています。
描かれているかごは太めの蔓で編まれた丈夫そうなものです。
とにかく暗いです。
りんごが描かれていればりんごのパワーで多少光を感じますが、じゃがいもだけを大量に盛られたかごの絵は救いがなさそうで逆に実物を見てみたい。
暗い中で光を探して手探りしているような。それでもその後の明るい絵の頃よりはまだ、安定した精神状態だったのかも知れないですね。
リンゴのかごのある静物(1885)
ジャガイモのかご(1885)
ジャガイモのかご(1885)
ジャガイモのかごのある静物、周囲に紅葉と野菜(1885)
野菜のかごのある静物(1885)
リンゴのかご(1885)
リンゴのかご(1885)
ジャガイモのかご(1885)
リンゴのかごと2つのカボチャのある静物(1885)
静物画が描かれた少し前の、農村の人々を描いたたくさんの絵の中にかごを編む人の絵も1枚だけありました。
オランダ時代の人物画はどれも夜の暗い室内で描かれたように見えます。
かごを編む農夫(1885)
(油絵をモノクロ写真かコピーで記録されたものと思われます。)
その後パリへ移り、印象派の影響を受け始めた1886年と1887年には土を盛って植物を植えてあるかごを3点描いています。
ムーラン・ド・ラ・ギャレットやモンマントル、黒い革靴、まだ爽やかさもある自画像などを描いていた頃です。
タンバリンにパンジー(1886)
芽吹いた球根のかご(1887)
クロッカスのかごのある静物(1887)
その少し後、パリ時代とアルル時代にかけてシンプルな果物かごの絵を3点描いています。
最初の暗い絵の時代からは2年ほどしか経っていませんが、切り花のひまわりや跳ね橋、色鮮やかな自画像などを描いてゴッホらしさが確立されてきた頃です。
かごはカラバッジオの果物籠で描かれていたような3〜4本一緒に編んでいく籐の伝統的な編み方。
かごというより平らなお皿に近いものです。
3点それぞれ違う色合いですがどれもそれぞれに素晴らしくて、果物がかごにのっているだけの絵がなぜここまで素晴らしいのか考え込んでしまいます。
リンゴのかごのある静物(1887)
リンゴのかごのある静物(1887-1888)
かごと6個のオレンジのある静物(1888)
そのまた少し後、ひまわり、郵便配達夫、夜のカフェテラス、黄色い家、などの代表作を描いていたアルル時代にもかごの絵を描いています。
静物:瓶、レモンとオレンジ(1888)
オレンジ、レモンと青い手袋のある静物(1889)
「絵画の中のかご」シリーズの記事は今回で5回目です。
ゴッホが好きで、最初はゴッホのかごの絵について書こうと思って始めたのですが、じっと見ていても意外と書くことがありませんでした。
同じころの他の画家はどうか、もっと前はどうかなど見てみると意外と面白がれるかごの絵があったりしてその辺のことが前回までの記事になりました。
ゴッホの絵は前回のマネから20年ほどが過ぎ、その分現代に近づいてきているはずですがそういう感覚は稀薄です。
静物画だから、人物が入ってないから、ということではなさそうで、これが孤高の人の絵なのかなと思ったりします。
いつの時代の何を、誰を、描いているということよりも、絵を描く意味を突き詰めすぎて、現実の世界の足場はあまり無いのではないかと。
1890年は絵を描き始めて9年後、暗いかごの絵からたった5年後ですがもうゴッホの最晩年です。
耳切り事件などを起こした後、サン=レミの精神病院に入ってもなお星月夜、糸杉、オリーブ畑など燃え上がるような色と形の傑作を生み出し続けたゴッホ。
同じ頃、ミレーの「野良仕事」などの版画を模した油絵を20点ほど描いています。
その一つがこちら。
女性がかごを持ち、ロバ(?)の背に乗り足をかごに入れています。
筆致はゴッホのものに違いありませんが、この安定感や現実感はミレーの下絵あってのものと思われます。
朝:野良仕事に向かう夫婦(ミレーを模して)(1890)
模写の元絵はこれかなと思ったんですけど、
Jean-François Millet | Peasants Going to Work | The Met
違いました。こちらでした。
File:The four times of the day-Leaving for the fields (Millet).jpg - Wikimedia Commons
かごを被っている方の絵はミレー自身の油絵があったのでゴッホは描かなかったのですね。
File:Going to Work by Jean-François Millet, 1851-53.jpg - Wikimedia Commons
版画の方は小さい手提げのかごを持っていたりもして面白い絵です。
と、いう感じでやっぱりミレーの絵には現実的な突っ込みどころがあります。
ゴッホのかごの絵を記事にするための、足場もここにはあったのでした。
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