ギャラリーKEIAN「響きあう技 中川原信一×柴田恵」に行きました。

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11月の終わりごろ、またギャラリーKEIANに行ってきました。 

「響きあう技 中川原信一×柴田恵」。あけびかごの中川原さんと竹かごの柴田さん、お二人の展覧会です。

午後にお二人のお話し会があったので、午前中から行ってデモンストレーションも見せていただきました。  お二人分じっくり見せていただく時間はなかったので、自分のやっている籐にどちらかといえば近い、あけびの中川原さんの作業を中心に見せていただきました。

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あけびのかごを編んでいるところを見せていただくのははじめてです。なんでも聞いてと言ってくださる優しい方でみんなで取り囲んでかなりいろいろなお話を聞けました。 

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びっくりしたのはあけびの材。2〜3mくらいの長さの蔓を直接さわるとかなり固く感じるのに、中川原さんの手によって実に柔らかそうに編まれていきます。力強いけれど繊細な力加減です。

健やかなあたたかい手をされているように思ったので、手が全然荒れないのかどうか聞きたかったのですが、自分の手が最悪に荒れているのが情けなく、黙って眺めました。

 

蔓は収穫後、柔らかい状態だったものを一度は完全に乾かしてから編む前になってから1昼夜ほど水につけたもので、そのあと2日間ほどはそのままで編めるのだそうです。 

すぐに水を吸って編める状態になるけれどすぐに乾いてしまう籐とはえらい違いです。 材を挽いてつくられている籐に比べると、ほぼ蔓そのままのあけびは植物の自然の風合いを残しているのと同時に自然の保湿力や弾力に恵まれているようです。

 

長ければ5〜7メートルにもなるというあけびは、木にからんでしまったものは使わず地を這うようにまっすぐ伸びたものを収穫するそうです。収穫は9月のまだ暑い時期から雪が振るまで。芽などを取り除いて揃えたものを天気がいい日は屋根の上にあげたりしながらひたすら干して準備するのだそうです。この準備が大変で、そして重要なのですね。 

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底作りから立ち上がってこだし編み。縦芯はずいぶんたくさん足し芯されています。

 

縁編みの前段階まで見ることができました。この感じ。なんとも言えないです。

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最近では中川原さんたちのように、暮らしに根差した作業(炭焼きや山菜取りなど)で山へ入る人も少なくなり、葉を牛に与えるようなこともなくなったせいで「葛(くず)」があけびよりもはびこったり、さらに杉の大量植樹、このところの異常気象などが重なり、昔のようにあけびが採れる環境ではなくなりつつあるとのことです。なんとなく存在していた山の「入り口」や「出口」もわからないような、整わない、荒れた状態。

それは柴田さんの方も同じだと話されていました。かご編みを語るとき、環境問題に話が至らないわけにはいきません。

 

しかし人工的に植林された杉林が伐採された後、何十年も杉だらけだった地面からあけびが生え出てくることがあるのだそうです。

それはあけびの『したたかさ』なのだと。

その言葉が出た時、中川原さんはうれしそうに語られたように見えましたし、少し沈みかけたその場の雰囲気がふと緩んだように思いました。

 

実は以前あけびかごについて調べて書いた記事の中でも中川原さん親子についても少し書かせていただいています。 

 専業でかごを編む人生を送られたお父様。その仕事ぶりの見よう見まねであけびの切れ端で遊ぶようにしてかご編みを覚えたとおっしゃる中川原さん。

 

お父様から具体的な細かい指導を受けることはほとんどなかったそうですが、信一さんの腕が確かなものになった後、売れれば売れるほど丁寧に作れとおっしゃったのだそうです。そして、晩酌の際にはかご編みの仕事をさせて悪かったというお話が出ることもあったと。

 

今、中川原さんのもとには、あけびかご作りをしたいという女子が毎年何人か訪れるそうですが、その人たちにかご編みの説明をすることはあるけれど弟子という形にすることはないのだそうです。

ご子息にも仕事としてやらせるということはしてないのだとおっしゃいます。

 

長い間あけびのかごとともに歩まれてきた方の、お考えです。

柴田さんの方もやはり同じように後継者問題は難しいとのご意見のようでした。

 

中川原さん、柴田さんともに、親御さん世代からご自身の世代にかけてかご編みを取り巻く状況が大きく変わった時代だったと思います。社会というか産業のあり方と人の暮らしが大きく変わったわけですが、しかしここに来てかご編みに対する認識が広く深くなりつつあるということもあると思います。

 

展覧会にきている方々がみんな素敵なあけびや葡萄のかごを持っていらして驚きました。情報受け取るだけでなくて実際に実物に触れて、ギャラリーKEIANのような活動に共感される方はやっぱりたくさんいらっしゃる。

 

あけびのかごもきっと『したたか』に、ずっと生き延びていくと・・これはわたしの期待というか、楽観かもしれませんが、思います。

 

お父様、中川原十郎さん作の背負いかご。これを見ると、実際に農作業に使われたかごの仕様をほとんど変えずに信一さんのかごバッグは作られているようですね。

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そして下の写真で壁にかかっている柔らかい素材のものはこれもお父様の作られた「スカリ」。実際の農作業でかなり使用したものだそうです。

 

あけびの蔓の茶色い皮を剥いで白い材にして編むことがありますが、その作業で出た皮の部分だけを撚り合わせて糸状にして編まれたもの。なんと手間のかかる作業でしょうか。

 

中川原さんによるとお父様は本当に器用な方だったそうで、こういう作り方をしたものを他では見たことがないとおっしゃっていました。(普通は藁で作られた。) 20161206165815.jpg

左側にかかっているは柴田さんの作ではないそうですが、竹の座布団。これはベテランの編み手の方にとっても簡単に作れるものではないのだそうです。

この引き出しも。ほんとに素晴らしい。

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作品の撮影をあまりできなかったのが残念です。

 

竹の緻密でさっぱりとした、清々しい編地と凛とした形、そのままのような印象の方。

また機会があるたびに見せていただきたいと思っています。

 

 

行けなかった以前の柴田さんの展覧会について少し書いています。 

gallery-keian.tumblr.com

 

 

 

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