バスケットの美しさの単純化。石川照雲の花籠

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この美しいものは

石川照雲(1895-1973)という方の作品。

1930年代から1940年代頃に作られたものだそうです。

花籠というのでしょうか。

茶の湯の世界の編組品なのだと思われます。

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Kagedo Japanese Art Ishikawa Shoun, Globe Flower Basket - Kagedo Japanese Art

栃木に生まれ、有名な飯塚琅玕齋(ろうかんさい)さんに師事したこと、戦前の帝展などに出品したことがあることなどはこちらのホームページでわかりました。

ワシントンにある「景堂」という日本のアート専門ディーラーのサイトです。

こちらはニューヨークのアートギャラリーのホームページで見ることのできた写真です。

この写真は本当に素晴らしいなと思いました。

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Weaving Beauty - Japanese Bamboo Baskets - L'Asie Exotique

 

またこちらは花籠のコレクターとして有名なロイド・コッツェンのLloyd Cotsen Japanese Bamboo Basket Collectionの一つです。

形はだいたい同じですが台らしきものがついていますね。

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Masters of Bamboo: Japanese baskets and sculpture in the Cotsen Collection

はじめ「Ishikawa Shoun」さんの漢字表記すらわからなくて、なかなか日本国内の情報に行きつかなかったのですが立命館大学アート・リサーチセンターがやっている「竹工芸データベース」で見ることができました。

それにしても日本での情報が少ないです。

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竹工芸データベース

ここまで来ると始めの2枚の写真にはまだ感じられたバスケットらしさがかなり無くなってきているようにも思いますね。

 

ところで、花籠と言われる竹工芸作品は、実用品ではもちろんなく美術品の域にあるもので、その多くはアメリカの富裕なコレクターの所有、日本にはあまり存在してないと聞きます。

 

高尚なものという先入観を持ってしまいますが、この石川照雲さんの作品はむしろポップな印象を受けました。

高級な竹工芸の、緻密で技巧を凝らされているものとは全く違って、一定の幅に切り取られたただ真っすぐなテープ状の竹だけを使って、細かいディテールは一切排されています。

よく見ると決まった組み方があるようで、最小限にしてある留め方も共通しているようです。

私にはわからないですが竹工芸の様式にある組み方をプリミティブに表現しているのかもしれません。

 

しかしここまで太文字の一筆書き的になっても、組まれた本体の上に持ち手がついているこの形を人はバスケットだと認識するのだなという面白さも感じます。

 

何らかの規則に従って組みあげられる”かご”というものを、いつの時代のどの世界でもなぜか人は可愛く思うということを、とても単純化した形で表しているようで、こういう美しいものが多くは海外へ行ってしまっているのは残念なことだと思いました。


この中に似たものが。

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