籐工芸 独学の教科書 ③

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新商品づくりの試行錯誤の毎日を過ごしています。

ワクワクして始めても、やり直しやり直しでやがて疲れ果てて眠りにつくような日々です。

行き詰まりを感じ、また教科書的な本を図書館で借りました。 

「籐を楽しむ本 基礎と応用(増補改訂版)」(小畑郁子/日本ヴォーグ社)です。 

こちらの本は1999年の発行です。

当時の定価は1,295円。

もちろん今では古本としてでしか手に入りません。

しかしアマゾンで最安値で3,584円。

結構高い・・・

(この本のもとになった1995年発行の

「籐を楽しむ本 基礎と応用」の方は2,590円からの出品がありました。)

籐(ラタン)を楽しむ本 基礎と応用―手づくりのたのしさを伝える

 

以前に取り上げた2冊の本は、70年代と80年代のものでした。

2冊を見比べて、写真の雰囲気や印刷技術などは時代の流れを感じても、籐工芸自体はそれほど変わってないという感想を持ちました。

今回の本は90年代後半、私にとってはつい昨日のような時代なので、さすがに籐工芸にも大きな変化が・・・!

ということはやっぱりありませんでした。 

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時代の感覚を濃く映し出しているように思えた70年代の本に比べ、2000年直前のあの時代の空気は、全然感じないと言っていいと思います。

あまりにも変わらない籐工芸。

時代から少しずつ浮かび上がっていたんじゃないか。

当時の私だったらどう見たかなと考えますと、正直、興味持てなかっただろうなと思います。

 

しかしこの本には、前の2冊にはなかったその先への模索が見受けられました。

「基礎と応用」の「応用」に当たると思われる部分はアート的な凝ったデザインの方へ、行き先を探っているようにも見えます。

こんな感じとか。

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材料の準備も簡単ではなく、高度な技術を必要としそうです。

一点もの的です。

竹工芸やあけび細工風なものを目指しているようにも見えます。

籐ならではのものではないような。

 

籐は、日本国内で民具として古くから使われてきたわけではないのだと思います。

竹、藁、いぐさ、あけび、葡萄、胡桃など、長い歴史の中を持つものとはちょっと違っていて、その差は埋まらないような感じです。

植物の蔓の皮を挽いて均質にしてあるという性質上、素材としての個性と制約が少ないということも籐の特別なところです。

個性がないのが個性ですというような言い方がありますけど、まさにそれです。自由です。

制約のある各地のバスケタリーを一般化する役目を担う面もあるけれど、それが洗練に向かったり新しいものになる可能性もあるかわり、偽物にもなりやすいような。(これが自由というものか。)

 

2000年以降になると籐工芸の教科書的な本はほとんど出版されていなくて、アマゾンで古本を探してみても、ごくわずかに凝ったデザインのバッグの本がある以外は蔓などの自然素材をややワイルドに編み上げる本の中に少し見られる程度でした。

 

ところで、この本、基礎的なことがとても丁寧にわかりやすく写真で説明されています。こんな感じ。

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束をそのままほどかずに水につけこんでいるのはどうかな、と思いますが・・・(材の固さや長さで一本ずつわけてから使う量だけ水に浸けた方がよいのでは。)

それはともかく、独学で始める人にとっては写真と図解を見ながら少しずつ進められるからいいと思います。

作品の点数はそれほど多くないけれど肝心な編み始めや編み終わりのバリエーションが豊富だし、丁寧に説明してあります。

私も少し視界が開けた気がします。こんな感じの編みはじめをさっそく試してみています。 

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自由を謳歌だ。




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