ニットの「パターンストック」というものを時々眺めてみます。
夏のかごバッグで使ったこんな感じの編み方、秋のかごバッグにも使おうと思っています。
何種類かの模様編みをあえて違う幅であしらったこの模様は、なんとなくアラン編みのセーターを思い出しながら編んでいました。
白っぽい無塗装の編地がオフホワイトのアラン編みのようなものになってくれたらと。
別名フィッシャーマンズセーターと呼ばれるアラン編みのセーターには、いくつものデザインボキャブラリーがあります。
有名な縄編みは漁師の命綱であり、バスケット編みは漁師の籠いっぱいの大漁を願うものであり、ダイヤ柄は富や名声、ハニカム柄は働き蜂への賛辞、他にも絆、海藻、生命の木、ブラックベリー等々いろいろ由来を語られる柄があります。研究するととても面白そうですね。
500年も前から、アイルランドの漁師さんそれぞれの家庭に特有な模様の配列で編まれ、夫が海で遭難してもどこの誰なのかがわかるようになっていたのだそうです。
私にとってさらに興味深いのは、だからと言って銘々好き勝手やるわけではなく、ある程度誰もが同じようなことをしてアラン編みはアラン編みたる共通のイメージをみんなで守っているという点です。
個人個人よりも、集団としてのアイデンティティということでしょうか。
たくさんの人々によって長い歴史の中で共有されてきたからこそ、複雑な模様の組み合わせでありながら高い完成度を持つのかも知れません。落ち着いた感じでありながら、人を格好良く見せる模様だとも思います。
ここには今世界をにぎわす盗作とか商標登録とか肖像権とか、そういう概念がそもそもありません。それはかご編みについても同じことが言えます。
世界中にかご編みの伝統はあって、その土地土地で限られた材料を使ったかご編み技術が、たくさんの人の手を借りて少しずつ変化しながら、ほとんど同じようなことを繰り返しながら、全体としてその土地の伝統を作り上げてきました。
「昭和の買い物かご」みたいなものは、今見るとレトロですが歴史的に見たら新しく、その土地の伝統みたいな世界から離れ、農業などの用途に使われていたものを奥さんのお買い物用に変化させたものなのだと思われます。
それにしたってやっぱりみんなが似通ったどこかで見たようなものを作っている。そして少しずつ変わっていく。どうもそういうものらしい。
ところで、私も少し編み物(ニット)の経験があります。かご編みでもニットの縄編みのような編み方があったり、アラン編みっぽくなったりと共通点がないわけでもないようなので、写真を見てみたいと思って少し探してみるとパターンストックというサイトを作っている方がいらっしゃいました。
自分の好きな感じを選んでみましたよ↓
今はニットのシミュレーションができるCADがあり、作画に使われてるのだそうです。
今回見つけたサイトは「フリー」と謳われているとおりご自由にご活用くださいというものです。
ケーブル・アラン編みだけでも43種類。どれも可愛く、似ていると思いきや意外とどれも個性的です。
これは結局無限にあるのだな、という気がします。
いくつかのデザインボキャブラリーをどう採用するのか、色や素材も含めてどう駆使して活かしていくのかということがデザインなのだと思います。
一つ一つの編み方で写真と編み図が載っています。
どれもいいなあ、どれも可愛い。そのままでは勿論無理だけどなにかデザインのヒントになるかなあとモヤモヤしながら見せていただきました。
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