バスケタルのかごについて。(主に材料について。)続き。
バスケタルが使っている材料、「籐」の「丸芯」で作られているかごはどのようなものかといいますと・・・
大人の方には多分、サザエさんが持っているみたいな昭和の「買い物かご」でおなじみです。
かごというもの自体は縄文時代の遺跡からも出土しているくらいで(「籐」ではないけれど。)、昭和40年くらいまでは普通に道具としてそこらじゅうにあったわけですが、この「買い物かご」ぐらいがみんなが手にした「植物で編んだかご」としては最後のものなのではないでしょうかね。(その後はプラスチックや金属のバスケットが主流ですね。)
でもそんな、「植物で編んだかご」が実用品でなくなっていく昭和の後半に、ご婦人のお稽古事として籐工芸が流行しています。
その際使われていたのもだいたい「丸芯」で、当時の雰囲気はこんな籐工芸の教科書的な本からうかがえます。
生活の道具としての「植物で編んだかご」は他のものに取って代わり、籐かごの教室などは今でもあるもののややレトロな存在になり、籐工芸は時代の流れとともに変化するということもあまりなく、でも消えることも無く、昔の雰囲気のまま今に至っている・・・ように見えます。
◆ ◆ ◆
今だと「丸芯」のかごは、店舗の備品やインテリアなどで目にします。(パン屋さんのトレイとか南国風のゆったりした椅子とか。)
雑貨屋さんでお手頃なかごバッグや収納用のかごなども売られています。
店舗用品や雑貨屋さんのかごは概ね安価です。大量生産ができるような体制であるか、人件費が極端に安いか、その両方か、です。私が同等の価格で競争しようとしても無理(、というより意味ない)です。
高価なものもあります。フェラガモのこのバッグにも籐の「丸芯」が使われています。高級ブランドのかごに多いパターンで、ブランドのアイデンティティーのために力を発揮しているのは「丸芯」の部分ではなくて「皮革」とか「金属」の部分だと感じます。
対照的です。
でも、このどちらにも似ていないような、「丸芯だけ」で、本気で(?)アイデンティティーを探しにいっているかごというのも、きっとどこかにはあるのだと思いますが・・・。
◆ ◆ ◆
私のかご編み生活は、漠然とかごを編みたいというところから始まりました。
特定の材料に思い入れがあるとかではない状態です。裏山に生えている植物の蔓が取り放題という環境にいるわけでもなかった。
なので、潤沢ではない資金でもなんとかなるくらい安価で、今でも専門に取り扱っているお店があって、古本であっても教科書があって、カルチャーセンターの教室もある、つまりいちばん取っつきやすい材料であった「籐」の「丸芯」で、まずはやってみようという感じでした。
そして少しかじってみた段階での感想は・・・
なんとなく材料としてはちょっと昔っぽい感じの「手芸用」・「ホビー用」、仕上がりは気を付けないとどうしてもお稽古事風。
籐の中でもお洒落な雰囲気の「紅籐」「アラログ」(皮がついたままの籐)と比べるとダサめ。
竹籠に比べたら伝統的でなく、あけびや胡桃と比べると無個性、安物。
要するになんでしょう、どうも本格的じゃない感じがつきまとうと言いますか。
・・・ディスっているわけではないんですが。
・・・事実を書いただけなのですが。
そう、この感じが「丸芯」。
なんとなく漂うちょっとダメな感じ、それが「丸芯」にはあると今は思っています。多くの人もそう感じているんじゃないかと。
いちばん取っつきやすくて、多分、手にした人の数は他の材料に比べたら相当多いはずのこの「丸芯」が、編まれて何か品物になった後も価値のあるものとして世の中に出ていっている感じがしないのは、そういうことなんじゃないかと。
白くて「やわ」で、仕上がりが「日陰の子」っぽくなってしまいやすいこの「丸芯」、そしてどうやら世の中からは置いてけぼりを食っているように見える「丸芯」、これをどうしていけばいいのか考えて続けて、今に至ります。
これをどうしたらお洒落にできるか。
存在感のあるものにできるか。
趣味のもの、という感じでなくて実用品にできるか。
昔っぽさもいいけれどクールにできるか。
籐工芸独特のデザインじゃなくてまずはごく普通のものにできるか。
そういう例とかお手本がほぼ無い状態、それが私にいろいろなことを考えさせます。
その中で少しずつ、「良さ」というものもはっきり意識できるようになってきました。それらを形にしていきたいと思います。
相応しいデザインを考えることと、編み上げる腕を上達させていくことで、白さや少しの弱さや特徴の少なさが、他の材料では出せない柔らかさやさっぱりした感じを備えた、なかなか素敵な佇まいになっていくのを感じます。
◆ ◆ ◆
いいお店を見つけてあるので、いつも在庫が切れることなく手に入ります。
何かよっぽどのことが起こらない限り、しばらくはこの材料でかごを編んで売って暮らしていきたいと思っています。
時々見に来ていただけると幸いです。
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