黒い手提げ断念の話。

moribasket
製作・商い 2017
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インスタでも少し触れたのですが、「黒」を断念しました。

 

以前の「濃い色」の手提げは、「塗装」で作っていました。

塗膜系でなく、浸透系の木用水性オイルを薄めて塗っていたので、「染色」に近いものではありました。

塗料の種類、色のブレンド、濃さなどを慎重に検討して、いい感じを出せていたとは思っています。

筆による「塗装」であることで、ベタっとした平板さは免れてもいました。

また、塗料なので色落ちの心配もなかったし。

 

ただこれは本当に籐のよさをよい方に伸ばしたものなのかなというという迷いがありました。

もともと濃い色の、あけびや紅籐に勝るものにはならない。

できた手提げ一つをみたら素敵なものであっても、これからもこの材料で自分ができることを考え続けていこうという中で、これはどうなのだろうと。

 

それをふまえて、今年私が目指したのは「黒」、「ブラック」なのでした。

「色」というよりは色を超えた黒い線のようなものを目指せたら、それはあけびや紅籐とはちがう個性になるのではと考えました。

くせのない、個性が強くない籐の丸芯に相応しいのではないかなと。

それができたならきっとカッコいい。冬に持ちたいものになると思ったのですが、それは簡単ではありませんでした。

 

「染料」というものの中には、健康に悪いものもあるとききます。

お客様に手で持っていただくもの、大事な品物を入れてもらうものであるので、まずは無害であることをクリアできるかが気になります。製作もうちの台所とかお風呂で行うことになるので排水からの環境負荷も。

だからといって草木染などの自然染料を使うということはいろいろな意味でハードルが高いしあまり濃い色はなさそう。

無臭柿渋+顔料、なども試しましたが安定した色をだすことが難しく。

そこでわたしが今回メインに考えたのは「桂屋ファイングッズ」の「みやこ染め」、コールダイオールでした。

家庭でも安全使えるように作られているECO染料とのことです。

竹工芸でも使われているとか。

念のためホームページから籐工芸に使う際のことなどいろいろお尋ねした際も丁寧にお答えいただきました。

オンラインストアからの発送も素晴らしく早い!

と理想的だったのですが、これを活かすには私は力不足でした。

 

目指していた「真っ黒」は、籐に施すと炭のような、青みがかった冴えない感じになってしまう。

黒という色も、実際の世界で実物に施すと素材の表面感と光の具合で、イメージの中の無彩色にはならないことを痛感します。

色がないからこそ強く意識されてくる素材感。

なんかガスガスとして、どうにも。

少し「茶」などを混ぜたりして黒に近いこげ茶をいくつか作ってみると、小さいピースで見るといい色でも、手提げ全体に施すとベタっとした一色になってしまう。

絵の具ベタ塗りっぽい。

籐を染めて使っているベテラン作家さんの作品などを見ると、他色使いで模様のようにされていたりすることが多いのはこれを避けているのかもなと思います。

 

また、「染め」であり、しかも濃い色なので、色落ちしないようにしなければならばい。

布を染める場合の色止め剤になる「塩」とか「ミョウバン」、みやこ染専用の「ミカノール」というのは籐にはあまり効き目がありませんでした。

なので塗料で仕上することしか道が見つからず、ニス艶あり艶無し、水性オイル系など木用仕上塗料を何種類か試しましたがこれがまたいい感じにはすることはできませんでした。

漆にちかいカシュー塗料などもあるようで、ふっくらとした美しい塗膜を作る素晴らしい塗料のようなので、これを完璧に施したらきっと素敵になるだろうと思いますが・・・

カジュアルで簡素な私の手提げには不似合だと思いました。

 

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こちらはほぼ黒の濃茶に染色してツヤ有ニス仕上。写真はけっこういい感じに見えています。

黒でありツヤがあるという条件は備えている。

でもそれが生成りの籐かごより素敵なものになっているかというと全然。

 

ここから研究して時間をかけていけば自分のかごに合う塗装を見つけることも、できないはずはないとは思います。

でもそれは果てしない道のりになりそうだと感じました。

私にそれだけの時間はやっぱりない。かご編みの試行錯誤だけで汲々としている私にはとても。

かご編みに関してさえも材料を絞り込み、やることを絞り込み、その小さい範囲での深さを掘っていこうとしているので。

 

 

今頃黒い手提げの大ヒットでご注文に追われている予定だったのでまあ意気消沈はひとしきりいたしました。

でも結論だせてよかった気もします。判断下せるところまでやれてよかった。

なけなしの時間と元手をつぎ込んだことを思うと首の後ろがスカスカします。

でも迷いのない、ホワイトクリスマスになります。

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