2017夏の手提げに至るまで。②

moribasket
製作・商い 2017
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今年の初めから夏前までの試行錯誤の記録です。

どうにかしたいということはいつでもたくさんあって、一つに絞ればいいのにいろんなことを同時進行的に考えてしまい、頭の中にいろんなことが浮かんでは消え浮かんでは消え、手を動かしてもやることの9割はうまくいかない、数か月でした。(いつもそうですけどね。ご注文がないときは。) 

煩雑でごちゃごちゃした道ですが成功に至ったメインの筋道だけでも書いてみます。(成功に至った場合しか、振り返った時の道筋ってなかなか見えないものですし。)

 

①まずは「小さめの手提げ」、「栗の手提げ」をなんとかしたいというスタート地点から。

ツボみたいな形の小さめの手提げと、

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それを横幅だけ拡げた栗の手提げ。

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四角い底から立ち上がって、開いて、真っすぐ上がって、閉じて、少し開く、という同じ型で作っていました。

この微妙な角度の変化をつけるのが難しいことと、小さすぎることによる使い勝手の悪さ、「小さめ」が「栗」になってデザイン意図が中途半端になってしまっていることなどなど、気になる部分がありながら、でした。

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↑ある日ふと、いったん編みあがった栗の手提げの上4分の1をほどいてしまうと、なんともスッキリ。左右だけでなく上下も対称の形。ああこういうのの方が自分好みなのだなと、スッキリした図形が好きなんだなと改めて思ったのでした。

  

そして以前、「山の手提げ」の四角さを気にして底を六角形にしてみたことがありまして、結局、その時は採用しなかったんですが、こういうアプローチもありだなと思っていたことを思い出しまして……

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六角形の底を持ちつつ左右も上下も対称な形の、型を作りました。これ。

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しかしこれがうまくいかず。大袈裟になったり、少しずつ型を変えて大人しくしてしまうと意図が見えなくなったり、この微妙な多面体はどうも無理めな雰囲気。

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四角底に戻る。でもこれは「四角2」だなあ。

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さらに型を複雑化させて、この辺になると何をしようとしているのかわからなくなってきている写真。「栗」とはかなりかけはなれたものになっているし、ポリシーを曲げて立ち上がりの内返しをしないのも作ってる。ことごとくダメ。

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この辺はわりと形にはなってきているけど。 

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四角底から前後左右に膨らましながら立ち上がると、縦芯の割り付けは四隅部分だけ放射状になって、それ以外の部分は平行に上がっていく。それは変えられない。

それに従って縦芯の配列を規則的に美しくコントロールするには膨らみを小さめに、直線的な図形にしていけばなんとかなる…これって「四角2」を作った時と同じ道。

縦芯の配置はとっても重要で、普通の丸かごなら自然に放射状になって迷いは生じない。でも四角底で、そこから四角でない形を作っていこうと思うと、美しくて、キチンと従うことができる縦芯のルールを作らないといけない。

よろけ編みというのは、縦芯を右往左往させて編むものだから、その問題を見えなくしてくれて、今にして思えば、「細面の手提げ」や「四角い手提げ2」の形の変化はよろけ編みだからこそうまくいっていたわけで

・・・

何がしたかったのか。カクカク、ギクシャクしてない優しい形を作りたい。でも自然な形を作るために、複雑なことをして難しいルールを課してしかも美しくならないなんて

・・・

丸いかごなら丸底で、自然な形を作りたいなら型を使わない職人芸で、優しい形を作りたいなら素直に伝統的な作り方に従えよ…ということなのか……。

・・・ 

そして戻ります。

サイドだけ変化させる平面的な形に、前後に少しだけ膨みをプラスした型。

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この方がいい。マチは一定、縦芯は横のラインなりに拡がっています。

・・・

・・・

でもやっぱり中途半端。

「四角い手提げ」からつづく、歴代の単純な形に続けて並べられる存在にはなってないと思う。

そして、さらに戻ります。

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これだけになりました。

平面的で、横から見ると四角でしかないけど、それでもやっぱり形がスッキリしている良さの方が自分の中では勝ってしまうんです。

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ということで完成して発売した新「栗の手提げ」です。

 

(この試行錯誤の途中で六角形に近いものも作っていましたが、この時はあまりいいと思えず保留していまして。

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その後、「六角の手提げ」が完成してからは、「六角」が「栗」を包括していると思えたので「栗」は中止しました。)

 

②次に、「四角い手提げ2」をなんとかしたいというスタート地点もありまして。

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「四角い手提げ」をベースにして四隅を面取りしたような形にした「四角2」。

形はとても好きなのだけど、使い勝手が悪いのではないか、スタイル重視でやさしさがないのではないかと気になっていたので、これをすこし横長にして、浅くしたものを作ってみましたが・・・

これが全然魅力のないものに出来上がりました。

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「四角2」は縦長だからこそ、流れるようなラインになっていたのですね。

よろけ編みでもだめですし。

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なので上を開いた形にしてみたりして、

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可もなく不可もなく、な感じなので持ち手までつけてみたけど…

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「四角2」はそれなりに特徴のある形だったけど、これって、何?

自然な感じではあるし、普通の形でもあるし、自然で普通の形に憧れてはいるのは確かで、それを目指していたんだけども・・・。でもこれは。やっぱりどうなのと。

型を使って編むような形ではないし・・・結局は自分らしさがないのですね。全然。 

 

かといって完全に角度のない四角にしてみるとモチベーションがつながらず。

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角度、斜めの始まりの位置などいくつか作ってみたところで、 

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あ、自分には、優しい角度とバランスを考えて完成させたのがあったじゃないかとやっと思い出すのでした。「細面の手提げ」。

この「細面」の型を使って横に広いものを作ってみたら、あっさり完成でした。持ち手を小さいものにして、ややトートバッグ風。

「舟の手提げ」です。

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新作ではありますが新型というよりは「細面」の進化形。

こういう形を目指していたわけじゃなかったけど、普通で自然でやさしい形というのを目指していたわけなので、よいゴールではあったと思います。

縦芯は、幅を広げるのではなく、1行増やすことで平行を保っています。その増し芯のための1段だけの縄編み。

平行縦芯が、より私らしさにつながったし、あっさりした感じの横縞も清潔感があってよかったと、ちょっと自負しています。

 

③そして、「小さめの手提げ」をそのまま大きくしたものも作ってみています。

単なる等倍だから間違いないと甘くみていたら出来上がってみてびっくり。少し大きくしただけなのに、これまた、全然可愛くない、魅力の無いものになっていました。

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角度や寸法を少しいじってみたがだめ。

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「小ささ」って実はすごいんだなと、変な発見。

それとあの「小さめ」の感じを引き継ぐには、厚さも考えないといけないなとも思いました。

 

さらに、「細面の手提げ」の低めバージョンを作りたいという出発点も。

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高さをおさえた「細面」ができたらポケットみたいな形で可愛いんじゃないかと思って、単純に低くして作ってみた形は確かにポケットみたいなんだけど…

なんだか小さくなってしまって、おかしい。なんか安っぽい。

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もとの「細面」みたいなやや縦長の形ってエレガントさが出るんだなと、ここでも発見。

 

以上2種類の失敗からだんだんと道が出来ていって、

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バランス、角度、いろいろ作ってみる。

極端に浅いものも作ってみる。置いた姿は結構かわいいけど持つとバカっぽかったり。持つかごというより置きかごのバランスなのかなと思ったり。

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小さく浅い感じを払拭するにはということで厚みを増やして、底面が正方形に近いものを作ってみる。四角いバーキン。

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わりといいように見えるけど、細い籐でこの形は作るの難しい。底の縦横比が1に近いほど、よじれやすい。

なのである程度厚みを持った長方形をベースに、ベストと思えるバランスを探ってみる。

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だんだん、かごバッグというより道具入れみたいなヘビーデューティーへの憧れが出てきてる。

でもやっぱり今の2mmの材料では弱々しくなってしまうな、と思う。1本手も無理がある。

ということで厚みのある低めの形のままで2本手のかごバッグに戻ってみる。

道具入れらしさは残したくて、しっかりした感じを出したくて、曲がり角を内返し&外返しで強調。

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これはもう商品化しようと思って撮った写真。

でも、結局は踏み切れませんでした。やっぱり頼りなくて、開口部のホールドの弱さから歪みやすくなります。

 ・・・

ここから先は、ホールドをしっかりするためのいちばんの方法を盛り込んだ、厚みのあるまま上半分は閉じる形、というのを作ってみたら、あっさりとここに至りました。

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「六角の手提げ」。

「小さめの手提げ」を少しゆったり使いやすくしつつもエッセンスを受け継ぐものになり、「栗の手提げ」をスタイリッシュにしたものにもなったと思っています。

 

「六角」は「よろけ編み」に続いて、「混合縞」も。1本取り、2本取り、4本取りの素編みを規則的に繰り返すこの柄は「栗の手提げ」に似合っていたものです。

「栗」のアウトラインを単純化して「六角」になったのと同時に、「栗」ではアウトラインに合わせて大きく拡がっていた縦芯も、途中で1行増やしてほぼ全部平行にすることができて、よりバスケタルらしくなりました。

(↓試行錯誤中のアウトラインに合わせて拡がる縦芯。)

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(↓完成形。)

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・・・以上です。

 

直前までさんざん紆余曲折したのに、答えがわかるとすぐに完成するというのはいつものパターンで、うまくいったものについては製作中の写真もありません。残っているのは迷いの中にいる写真ばかりなので、下手すぎて情けなく、小さく載せとります。

わかりやすくするために分けて書きましたが、このいくつかの道筋は絡み合ったり交差したりもしています。めんどくさいヤツです。お読みいただいた奇特な方にはほんとうに申し訳ない。結論はいつもとてもシンプルな形に落ち着き、こんなめんどくさい道を経ないとできないんか、と自分に問いかけるのですが……できないんですね。自分は。

何回おんなじような試行錯誤をして、毎回同じようなツッコみを自分にしている。この繰り返し。でもこれによって少しは自分の創作の意味が見えてきているんじゃないかと思いたいです。

まあ一応、この夏、「舟」と「六角」は主力となり、これからも作っていこうというものにはなってくれました。 

 

前回記事にも書いたのですが、この時期の私は、カクカクとした形を脱しようとして作っていた、少し凝ったデザインのものを、優しい形、自然な形にしていきたいということを考えていたのですね。同じように籐でかごをつくっている方たちの優しい雰囲気が刺激になりました。

苦しんだのですが出来上がったものはもとに戻ったような単純なものになりました。優しい形を目指すにも、自分のやり方でいこうという気持ちが強くなったというか。努力して、これができるようになったというよりは、これはできないということがわかった、というご報告がいつも多くなります。前進しているというよりは、半分以上はあきらめ。

でもまだまだ懲りずに、夏のご注文にお応えしている間も、秋以降につくりたいデザインが湧いてきています。

それを始める前に、なんとかまとめができてよかった。お付き合いいただいた方、ありがとうございました。

 

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